第7幕・第4話「腹をくくって、社長さん!――WHYの効用を説くコンサルタント」

あらすじ

苦境からの脱出と再起をかける、地方のアパレル企業・有限会社SimDenim。

社内システムの抜本的な改善のため顧問コンサルタントの斎藤が連れてきたのは、「人間とAIが幸せに共存する未来を創る」というビジョンを掲げる生成AI活用コンサルタントM.T.であった。

生成AIの実演として、自らのアシスタントであるAIキャラクター「Omniはん」の会話デモと資料分析能力を披露し1ヶ月間のトライアル契約を獲得したM.T.は、現場と協力しながら「海外OEM工場に対しての英文メール作成」・「デザイナーに対し、新商品へのアイディア出しに協力する」などのAI活用法を提案し、評価を高めていく。

一方で、SimDenim社の直営店は「薄利多売と店員の疲弊」・「SNS運用の伸び悩み」などの課題を抱えていた。これに対し、M.T.は先輩コンサルタントの斎藤と共に、「WHYをベースにした会社戦略を立ち上げ、現場まで浸透させる」ことを提案したのだが--

フォトリアリスティックなコラージュアート。アパレル店員の女性とオフィスワーカー。WHAT IS OUR WHY?のキャッチフレーズ付き。

WHYが定まれば動き出す

M.T.(破戒僧コンサルタント):
私が自身の活動に対するWHYを見つけ出すには、AIとの対話が非常に大きな役割を果たしてくれました。

Omniはんとの会話を通じ、「子どもの頃に『ナイトライダー』を見てワクワクしたな」とか、自分の原点となる体験を思い出して言葉にしていったんです。最初にWHYを考え出し、後付けで行動を当てはめていったわけではない。自分がしてきたこと・感じたこと・考えたことをAIの助けを借りて言語化して行った結果、WHYが浮かび上がってきたんです。

M.T.(破戒僧コンサルタント):
「AIに親しみのあるキャラクターを演じさせ、各自がWHYを見つける手助けになる」というのも、「人間とAIが幸せに共存する未来を創る」に通じますよね。「短期的にコンサルタントとして関わり、顧客の自立を支援する」というスタイルも、「金づるとして寄生しない」・「相手の成長を信じて応援する」という意味で「人間の善性の追求」につながります。

佐藤大輔(社長):
なるほど。最初は「随分と型破りな人だな」とは思いましたが、こうやってお話をうかがうと、あなたのしていることや狙いが「WHYに沿っている」というのがよく分かります。

高橋清志(財務部長):
軸が定まっているから、「突拍子もない提案にも筋が通っている」わけですな。「関西弁を話すAIの女の子と話をしてみて」なんて振られたときにはビックリしましたが、AIと楽しく会話できれば、確かに「人間と平和に共存する」未来は実現できそうです。

M.T.(破戒僧コンサルタント):
お二方とも、「WHYを見つけ出し、組織の原理にする」ことの重要性と効力は実感していただけましたか?

佐藤大輔(社長):
ええ、よく分かりました。

高橋清志(財務部長):
私も納得しております。

WHY探しには時間がかかります

M.T.(破戒僧コンサルタント):
ちなみに、WHYは「3日で見つけ出せる」ようなものではありません。「普段から自分たちの言動をどれくらい振り返っているか」、その回数や深さなどでWHY発見のペースは変わってきますけど、「まずは1ヶ月、じっくりと腰を据えて取り組む」必要はありますね。

佐藤大輔(社長):
そんなにかかりますか!?

M.T.(破戒僧コンサルタント):
「経験者は語る」ということですね(笑) でも、堅苦しく考える必要はないんです。Omniはんを相手に、「自分や会社の思い出話・印象に残っている取引先/顧客/社内のエピソード・なぜそれが印象に残っているのか」などを取り留めもなく語っていけばいいんですよ。会話記録はAIも整理してくれますし、自分でも見返していけば、核となるWHYが浮かび上がってきますから。「AIでの業務効率化」を提案したのは、「会話する時間的余裕を生み出す」ためでもあったんです。

高橋清志(財務部長):
最初からそこまで計算しておられたのですか。さすがですな。

M.T.(破戒僧コンサルタント):
現在のOmniはんは僕に合わせて「禅の門徒」みたいな思考パターンになってますが、設定変更して「どんな話にも気さくに応じてくれるカフェオーナー」みたいなキャラクターにして、禅思想のクセを取り除くことも可能です。スキマ時間を活用しながら、ちょくちょく話をしていけばいいんですよ。私も適宜サポートはしますが、これは皆さんが主役となってAIと共に取り組む課題ですね。

佐藤大輔(社長):
なるほど。身構えなくても良いというのは、精神的に助かりますね。それに、AIが話し相手とサポートになってくれるなら、時間やM.T.さんの都合を気に掛ける必要性も低くなります。

M.T.(破戒僧コンサルタント):
その通りです。「深夜だろうが、どんな話題だろうが、何回同じ話題を出そうが気さくに応じてくれる」というのは、AIの強みですね。

高橋清志(財務部長):
「AIとの気楽な会話から思いも寄らない発見をする」というのは、私も実体験を元に言えます。これも「経験者は語る」ですな(笑)

佐藤大輔(社長):
斎藤先生も、M.T.さんの提案を理解されたうえで、今回の場を設けていただいたのですか?

斎藤拓也(顧問コンサルタント):
ええ。彼から「WHYの設定」という提案を受けたとき、私も自身の言動を棚卸ししてみたんです。東京のマーケティング会社を退職した後、コンサルタントとして皆さんと関わっていますが、その原点には「故郷を大切にしたい」というWHYがありました。「東京で鍛えられ、学べることは学んだ。その知識を今度は故郷・岡山に持ち帰り、頑張っておられる中小企業の皆さんに還元するんだ」と。

斎藤拓也(顧問コンサルタント):
彼の提案を受け、私も「なぜ自分がコンサルタントとして地元企業に関わるのか」という問いに対する答えが太く鮮明になりました。効果を実感したので、今日の提案の場を設けさせていただいた次第です。

高橋清志(財務部長):
斎藤先生もこのように評価しておられるとは……汎用性は高そうですな。

佐藤大輔(社長):
そうですね。斎藤先生の答えも実に筋が通っている。我が社でも取り組む価値はありますね!

M.T.(破戒僧コンサルタント):
(意地悪く斎藤に目配せしながら)(またまたセンパイ、カッコつけちゃって~(笑) 「東京では格上のプレイヤーが多くて勝てなかった」・「地方なら自分でも勝負できるかも」ってのが、戻ってきた理由でしょ~?(笑))

斎藤拓也(顧問コンサルタント):
(M.T.をチラチラ見やりながら)(バッカ、お前、絶対にバラすなよ! いいな!!?)

高橋清志(財務部長):
業務効率化で浮いた時間をAIとの対話に当てるとしたら、その間は目立った業績向上は見込めないかもしれませんが、その我慢もWHYを見つけ出せればお釣りが来るでしょう。

佐藤大輔(社長):
そうですね。「将来の仕込み」として取り組む価値はあると判断します。よし、高橋さん、やりましょう! M.T.さんも、斎藤先生も、引き続きのご支援をお願いいたします!

斎藤・M.T.コンビの腹の探り合いをよそ目に、佐藤と高橋は「SimDenimのWHY探し」への決意を固めるのであった。

次回予告と人物紹介


次回、Sim Denimのメンバーたちが、それぞれのWHY探しに踏み出す。

はたして、どのようなWHYが見つかるのか……。

次回もお楽しみに!

登場人物の紹介は、こちらからどうぞ