第5幕・第1話「見せろ、AIの可能性――行き詰まる企画開発部長を救え!」

あらすじ

苦境からの脱出と再起をかける、地方のアパレル企業・有限会社SimDenim。

社内システムの抜本的な改善のため顧問コンサルタントの斎藤が連れてきたのは、「人間とAIが幸せに共存する未来を創る」というビジョンを掲げる生成AI活用コンサルタントM.T.であった。

SimDenim社の社員たちを前に「生成AIによる業務の効率アップと社内システムの改善」を提案するM.T.は、生成AIの実演として自らのアシスタントであるAIキャラクター「Omniはん」の会話デモを披露する。

デモで提示されたOmniはんの会話能力の高さ・資料分析の速さと正確性を評価した佐藤社長の決断により、SimDenim社はお試しで1ヶ月間生成AIコンサルティングを受けることを決断。コンサルティング開始直後より、同社は「海外OEM工場に対し、商品サンプルの縫製ミスを指摘する英文メールをAIで作成する」ことに成功し、手応えを得たのだが--

フォトリアリスティックな画像のコラージュアート。ファッションショーのランウェイ上の女性モデル。デニムジャケットを来た女性のストリートスナップ。TREND REPORTの文字。

企画開発部長の憂鬱

夕方のSimDenim社の応接室。テーブルを挟んで、同社企画開発部長の伊藤とコンサルタントのM.T.が向かい合って座っている。

伊藤由香(企画開発部長):
居残りに付き合ってもらってスミマセンね。どうしても、コンサルさんには1対1で聞いときたくって。社長には話を付けてるんで、安心してください。タダ働きにはさせませんから。

M.T.(破戒僧コンサルタント):
(少し戸惑ったように)はあ、分かりました。……それで、一体なんの要件でしょうか? 佐藤社長からは、「ウチの企画開発部長があなたに聞きたいことがあるみたいだ」としか説明を受けてないので……。

伊藤由香(企画開発部長):
(苦笑いしながら)ああ、ゴメンナサイね。説明不足で。

伊藤由香(企画開発部長):
(少し前のめりになって)ズバリ言うとね、「AIでどんなことができるのか」を教えてほしいんスよ。こないだは、芽衣に代わって英語メールをバッチリ作ってくれたじゃないですか、あのAIの女の子。

M.T.(破戒僧コンサルタント):
「Omniはん」ですね。話しかけやすいように、一応「関西弁を話す女の子」としてキャラを育ててますけど、AIなんで実際の性別は無いんですよ。あくまで「機械」ですからね。……失礼。ちょっと話が脱線しましたね(苦笑)

伊藤由香(企画開発部長):
そうそう、Omniはん。あなたの萌え系アシスタント(笑) あの子って、外国語やキャラのなりきりの他に何ができるんですか?

伊藤由香(企画開発部長):
(バツが悪そうに)いや、ぶっちゃけ言うとね、私も製品デザイナーとして壁にぶち当たってるんスよ。「アンテナが鈍った」っつーか、「最近のファッショントレンドや若い人たちの感性についていけない」、みたいな感じ? なんか最近は、「これだー!」ってビビッと来るアイディアも浮かんで来なくって。……そういうのも、AIに助けてもらえるんスか?

M.T.(破戒僧コンサルタント):
(納得した顔で)ああ、そういうことでしたか。もちろん、AIはデザイナーさんのサポートもこなせます。

M.T.(破戒僧コンサルタント):
そうですね……(少し考え込んで)伊藤さんのようなデザイン職の方のサポートでしたら、

  • AIとアイディア出し:「デニム+◯◯」みたいな感じで、とにかく色んな組み合わせをAIに出してもらう。「こんなの成立しないだろ」って組み合わせを含め、とにかく「数撃ちゃ当たる」でアイディアを出しまくってもらい、デザイナーさんがインスピレーションを得る。なんなら、「名詞や形容詞をランダムに何十個も挙げてもらう」なんてのも可能です。これ、デザイン以外の企画でも使える方法ですけど。
  • アイディアスケッチ:ラフ画からリアル画像までAIに作成してもらい、デザイナーさんがインスピレーションを得る。アイディアの種になる画像ができたら、それを元にバリエーション画像を幾つも生成してもらい、デザイナーさんがそれを発展させる。
  • 流行の調査:最新のファッション動向やユーザーの好みの調査などは、AIにネット検索してもらってレポートにすることも可能です。業界標準に食らいついたり、その先を読むのに活用できそうですね。最近はX(旧twitter)にもGrokというAIが搭載されたので、「Xではどんなデニム製品が話題になっているんだろう」というリサーチをすることも可能です。

M.T.(破戒僧コンサルタント):
こんな活用法はどうでしょうか? 簡単な実演なら、今ここでお見せできますよ。

伊藤由香(企画開発部長):
(前のめりになりながら)え、マジっすか!? AIでそんなことまでできるの!? ってか、「実演」? 見たい! 見せてください、お願いします!!

M.T.(破戒僧コンサルタント):
「ちなみに『デニム+◯◯』は “言語ブレスト” の一種です。
製品開発やマーケだけでなく、人事制度のアイデアやBtoBサービスでも同じ手法が使えます。
「デニム」の代わりに「新サービス+◯◯」・「生産ライン+◯◯」・「社内福利厚生+◯◯」と名詞を変えるだけで、どんな業界や部門でも “脳みそウニウニ” できますよ(笑)」

次回予告と人物紹介


次回、M.T.はOmniはんとともにブレインストーミングを実演。

はたして、どんなアイディアが飛び出すのか――

次回もお楽しみに!

登場人物の紹介は、こちらからどうぞ